【論題文言案】 日本は原則すべての国民に生活に最低限必要な現金を無条件で支給する制度を設けるべきである 【論題背景】  近年日本では、貧富の差拡大や生活保護たたきによる保護受給の遅れなどから、生活に困窮する層が一定数存在すると言われています。また、ブラック企業に就職してしまったり、職場でハラスメントを受けたりなどしても、収入が絶たれることを恐れて、職場にとどまらざるを得ない人も存在します。  本論題案は、いわゆるベーシックインカム制度を導入することにより、これらの事態の打開を試みることの是非を問うものです。  本論題案と同様の論題は、2018年の第24回JDA春季ディベート大会でも採用されており、実績のある論題です。 【論題案要件についての検討内容】 1) 原則として、時事問題を扱った政策論題であること  近年日本では、貧困問題は深刻化しており、その解決のための政策について議論することは、時節にかなったものと言えます。 2) 主語は原則「日本は」「日本政府は」のいずれかであること  本論題は、日本政府が日本国民に対して現金を支給する制度の是非について問うものであり、条件を満たしています。 3) 1シーズン(約3ヶ月)に渡って議論可能な論題であること。すなわち、 3)-1 十分な量の資料が入手可能であること(Google、CiNii、NDL-Online等の検索結果の添付が望ましい) 「ベーシックインカム」の検索結果: ・bing検索:約191,000件 ・NDL-Online:863件(書籍・雑誌記事含む) ・CiNii:418件  となっています。十分な検索結果があり、さらには海外での取り組みを記載した英語文献や、関連ワードでの検索も考えられることから、シーズンを通じてリサーチ対象が枯渇することは無いと考えられます。 3)-2 ある程度の量の肯定側・否定側議論が作成可能であり、側による勝敗バランスが取れると考えられること(考えられる肯定側議論例・否定側議論例を添付のこと) 肯定側/否定側議論の例として、以下が考えられます。 ・肯定側議論例  「貧困問題の解決」  現在貧困ライン以下の収入で生活している人々含め、すべての国民に最低限の現金が支給されるため、全体的な生活水準の底上げが期待できます。  「職業選択の多様化」  現状ブラック企業に勤めていたり、職場でハラスメントを受けていたりしていても、収入のためにやむを得ず職場にとどまっているところ、論題を採択すればその必要がなくなり、状況を改善することが可能になると考えられます。さらに、最悪働かなくても最低限の収入が保障されるのであれば、自己実現のための活動やボランティアなど、多様な活動に従事する人が増える可能性もあると考えられます。 ・否定側議論例  「生産性の低下」  働かなくても一定の収入が得られるのであれば、生産的な活動に従事しなくなる人が一定数発生することは避けられないと考えられます。その場合、日本全体としての生産性が低下することで、経済に対して悪影響を及ぼす可能性が考えられます。  「財政破綻」  一般的にベーシックインカム制度を導入するためには莫大な予算が必要であると言われています。現状赤字体質な日本の財政にさらにベーシックインカムの負担が乗ることによって、最悪日本が財政破綻し、国家的危機に陥る可能性も考えられます。 3)-3 論題と同じ政策が論題使用期間中に実際に採択される可能性が十分低いと考えられること  現在の日本においては、ベーシックインカムの制度を導入しようという動きは無く、少なくとも本年中に同様の政策が採られる可能性は極めて低いと考えられます。 【参考】 「ベーシックインカムとは?メリット・デメリット、実現の可能性を解説」『朝日新聞SDGs ACTION!』2022年3月17日 https://www.asahi.com/sdgs/article/14572473 「ベーシックインカムが解決策にならない理由」『東洋経済ONLINE」2018年11月9日 https://toyokeizai.net/articles/-/247365