【論題文言案】 日本は国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇または武力の行使を認めるように憲法を変えるべきである 【論題背景】  2022年に入ってから、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、日本国内でも有事対応能力の強化が話題となることが増えました。本論題案は、日本の紛争対応能力強化、特に憲法9条の改正による、日本の武力行使可能性拡大の是非を問うものです。  本論題と同様の論題は、過去に2001年のJDA春季ディベート大会論題として採用されています。また、類似論題として「日米安保廃止」や「自衛隊のPKFへの派遣」といった論題が1990年代後半から2000年代にかけて何度か議論されています。   【論題案要件についての検討内容】 1) 原則として、時事問題を扱った政策論題であること  本論題案は、日本の軍事政策や外交政策に密接にかかわるものであり、また、日本は、中国、台湾、北朝鮮、ロシア、といった国/地域と近接しており、これら国/地域に対する対応に大きく影響する本論題案は、ディベートの論題として議論する価値は十分あると思われます。 2) 主語は原則「日本は」「日本政府は」のいずれかであること  上記条件は満たしています。 3) 1シーズン(約3ヶ月)に渡って議論可能な論題であること。すなわち、 3)-1 十分な量の資料が入手可能であること(Google、CiNii、NDL-Online等の検索結果の添付が望ましい) 「憲法9条改正」での検索結果: ・bing検索:約1,290,000件 ・NDL-Online:101件(書籍、雑誌記事含む) ・CiNii:41件  NDL OnlineやCiNiiでの検索結果がやや少ないように感じられますが、「憲法9条改正」以外にも、自衛隊の合憲化や昨今の国際情勢に関するものなど、様々なキーワードで検索が可能であること、軍事・国際情勢関連の海外文献も豊富にあることが予想されることから、シーズンを通じて、リサーチの材料が尽きることは無いと思われます。 3)-2 ある程度の量の肯定側・否定側議論が作成可能であり、側による勝敗バランスが取れると考えられること(考えられる肯定側議論例・否定側議論例を添付のこと)  肯定側/否定側議論として、以下が考えられます。  ・肯定側議論    外的脅威への備え(特に日本周辺有事の際の行動の自由度が上がることによる問題解決可能性の向上)    日本に対する侵略の未然防止(周辺国に対する抑止効果など)    国際貢献(自衛隊の海外派遣の自由度が上がることで、日本周辺以外の国際紛争においても、直接的な貢献ができる可能性があります)    など  ・否定側議論    日本周辺での軍拡競争(日本が軍備増強に乗り出す(と感じる)ことで周辺国が刺激されることによる国際情勢不安定化)    日本の軍事費が増大することによる財政圧迫    海外派遣の際の自衛隊員の危険増大    など  議論の方向性はやや限定的かもしれませんが、結論に至る証明部分については無数の資料が参照でき、ディベーターの実力が反映されやすく、肯定/否定バランスも取りやすいと考えられます。 3)-3 論題と同じ政策が論題使用期間中に実際に採択される可能性が十分低いと考えられること  現在衆議院、参議院とも、改憲に前向きな政党の議席数合計が全体の3分の2を超えてお り、憲法改正発議の可能性はあります。しかし、複数政党の合意が得られる改正案を作成 できるか、できたとして、国民投票で過半数を得られるか、など多くの高いハードルがあ り、今年末までに憲法改正が実現する可能性は著しく低いと考えます。