■日米安保終了論題について 本論題案は、昨年秋季大会論題策定時にも検討しているので、その際の検討結果をこちらに再掲させていただきます。 ==========以下昨年応募時の議論========== [JDA秋季大会論題案]日米安保終了 JDA秋季大会論題案をご応募いただいたので、こちらに投稿させていただきます。質問、コメント等は、本メッセージへのコメント、tournament(at)japan-debate-association.org へのメール、で受け付けさせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ======================================== ・論題案文言 「日本は日米安全保障条約を終了すべきである。」 「日本およびアメリカ合衆国は、日米安全保障条約を終了すべきである」 1)日米安全保障条約終了は時事問題を扱った論題だと考えます。 世界規模で見ても、米中対立の激化、朝鮮半島情勢の不安定化などを背景に安全保障環境は激変しています。アメリカ合衆国はその中で、「世界の警察」たる地位を辞めようとしたり、中国により厳しい姿勢を取るようになるとともに、日米安保条約の負担が不公平であると不満を漏らしたりするなどアメリカ合衆国の安全保障政策も変化しつつあります。また日本国にとっても安全保障関連法案で集団的自衛権の行使が限定的に可能になるとともに、沖縄の過大な負担が一層問題となるなど安全保障政策を基本から考え直す転換点になっていると考えられます。こうした状況を踏まえると、冷戦期に形成された日米安全保障条約体制を考え直す時期に来ているものと思われます。 2)主語は「日本は」になっております。なお日米安全保障条約は第十条において「もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。」と規定しており、日米両国のうち片方が終了の意思を表明すれば自動的に終了するので、「日本およびアメリカ合衆国は」という主語にすることも可能だと思われます。 3)1シーズンに渡って議論可能な論題であると考えています。 3)-1 十分な量の資料は入手可能であると考えています。 具体的には「日米安保」でGoogle検索した場合、15,200,000件のヒット、「日米安保」でCinii検索した場合1658件のヒット、「日米安保」でNDL-ONLINE検索した場合2399件のヒットとなります。また、「the US‐Japan Security Treaty」でGoogle検索した場合31,700,000 件のヒット、「the US‐Japan Security Treaty」でGoogle Scholar検索した場合48400件のヒットとなります。外交に関する書籍・論文は多数出版されており、また日米安保については戦後日本外交の基礎として多くの議論がなされているため、十分な資料が入手可能であると考えられます。 3)-2ある程度の量の肯定側・否定側議論が作成可能であり、側による勝敗・バランスが取れると考えられます。 肯定側としては、アメリカとの戦争に巻き込まれるリスクの減少、自律的な軍事・外交政策の採用、米軍基地問題の解消などの議論が考えられると思われます。否定側としては、近隣諸国との間での軍拡競争による軍事リスクの拡大、日米関係の悪化などが考えられると思われます。 この論題案は、過去にもJDA論題となっており(2009年前期、1996年後期)、またNAFAの2015年度春、2019年度秋にも同一の論題が扱われています。比較的定期的に取り上げられるテーマであり、資料や議論の量、肯定・否定のバランスなどは特に問題ないと考えています。 3)-3論題と同じ政策が論題使用期間中に実際に採択される可能性が十分低いと考えられます。 日米安保の終了を優先事項として訴える政党は日米両国において私見では存在せず、今から短期間で日米安保の終了まで踏み切るということは考えにくいと思います。 よろしくお願い致します。 ============================================================ [運営からのコメント] 本論題案については、過去多数回にわたり採用されている論題のため、基本的には大きな問題点はないと考えています。資料の量についても、十分過ぎる量が存在すると思われます。 ただ、前回のJDAで採用されてから10年以上の時間が経過しているため、直近のNAFA2019年秋論題における議論内容を若干調査させていただきました(NAFATの壁パッチから議論を拾わせていただきました)。 肯定側議論としては、 ・ロシアとの関係良化⇒北方領土返還に結びつく ・反米テロに巻き込まれることを防ぐ ・米軍に提供していたリソース(金銭や土地など)の活用が可能となる ・対アメリカ外交での妥協が不要となる ・米中戦争に巻き込まれることを防ぐ ・自衛隊の独自行動が可能になる ・日米安保は憲法違反 といったものが挙がっていました。対する否定側議論としては、 ・中国の日本侵攻 ・(アメリカ分の圧力がなくなることによる)中国のアジア諸国(フィリピン・ベトナム島)への進出 ・アメリカの抑止力減少 ・日米関係の悪化 ・日本の孤立 といったものが挙がっていました。若干否定側議論が中国の動向に集中している印象はありますが、ここに挙がっていたもの以外にも、「日本の軍拡」や「日中の歩み寄り⇒米との対立」といった議論も考えられるかと思います。 総じて、本論題案を論題投票の候補にすることは、差し支えないと判断します。