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日本ディベート協会通信 Volume 24. Number 2 2009.10.1 |
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| 巻頭言 | ||
ディベート内intra-debate競争とディベート間inter-debate競争 矢野 善郎 |
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| ディベート教育といえば「アメリカ」というイメージがあるが、アメリカ合衆国というのは、実際には幾つものかなり異なった州(国家)による連邦だということを意識すると、かなり違った絵も見えてくる。 今年度の日米交歓ディベートの一環として行われた「アメリカの高校ディベート教育」というワークショップは、まさにこうしたことを考えさせられる機会となった。参加者は少人数であったが、2009年6月に行われたセッションではかなり濃密な議論が行われた。とりわけ、今年度のチームメンバーが、コーチであるヤノ先生も含め、みな高校ディベート出身で大学でも継続したディベーター(ヤーノ先生は高校の指導歴もある)であり、しかも異なった州の出身であったことが幸いし、紋切り型のディベート論とは違い、一枚岩とは言えないアメリカのディベート教育の実像に迫る議論が行われた。 ヤノ先生の出身地であるテキサス州の場合などは、全米でも最も恵まれた環境の一つと言え、高校でパブリック・スピーキングを学ぶことが必修となっており、ディベートなどにも予算が潤沢に配分されている。当然、州の大会などは活気を帯び、何百もの学校が参加する巨大なものとなる。これは、オハイオ州出身のTonyの場合とは、かなりのギャップがあったようだ。彼の場合、恩師がたまたまディベート教育に熱心で行動的な人であったのが幸いしてディベートに触れられたようだが、学校内はおろか付近の学校でもディベート活動は希だったそうで、活動の場を求め何時間もドライブして他の州までいったりしたそうだ。アメリカが全土的にディベートに熱心だと考えるのは間違いであろう。州によっては、ごく限られた学校しかディベートを行っていない場合すらある。アメリカの教育全般の特徴(ある意味では弱さ)は、まさに多様性にある。州ごとに多様な「実験」が可能であり、うまく工夫されれば、大変効率の良いシステムが作られうる一方で、何も工夫しない最悪のシステムも起きうる。日本でも地方分権などが語られるようになったが、一長一短だということを認識しつつ、良いシステムが模倣される全体的工夫も必要であろう。 もう一つ、このワークショップの中で見えてきた多様性がある。それは、アメリカにおける「ディベート」そのものがさらに多様になっていることである。アメリカのディベート大会は、テキサスなどの場合、何百チームもが参加し、大変ハイレベルな競争が行われている。が、アメリカには、そもそもディベート組織や、ディベート形式そのものが複数競い合っているディベート間競争inter-debate competitionとでもいうべき状況もある。 例えば、高校のディベート団体としては、より歴史のある全米的なNational Forensics League (NFL)以外にも、高レベル(よりマニアック?)な大会をめざして組織されたThe Tournament of Champions (ToC)などもある。学校・引率の先生は、予算や生徒の能力にあわせて、大会を選ぶことができる。しかも同じディベート大会の中に、いくつもの部門がある。例えばNFLでは日本でもおなじみの形式 1) (Cross Examination) Policy Debate ― 事前準備型(大学におけるNDT、 CEDAと同形式) 2) Parliamentary Debate ― 即興形式 以外にも、次の二つの部門がある場合が多い。 3) Lincoln-Douglas Debate ― 1対1ディベート 4) Public Forum Debate ― 専門用語を避け、 CNNの番組 "Crossfire"をモデルにした、より一般人にも通用することをめざした政策ディベート 特に、最後のPublic Forumは、最新の形式であるだけでなく、近年では大変活気があるそうである。Policy Debateでは、どうしても過度に専門用語などが飛び交い、証拠や理論にテクニカルになりすぎる。Parliamentaryでは、即興型の限界ゆえ、議論がかみあわないまま終わるということも多い。こうした不満を取り入れ、幾つかのよりとっつきやすい仕組みを工夫している。ディベート内競争だけでなく、ディベートそのものの競争があることのフィードバックもある。例えば、人気のないPolicy Debateをどう立て直すかなどのシンポジウムも行われているそうである。 現状に不満があるなら、不満のある人を集めて新しい組織を作ってしまえばよい。州ごとの地方分権に付け加え、こうしたアメリカの伝統とも言える「自発的な結社の精神」が、アメリカにおけるディベート間競争を促進しているのだろう。そうした絶えざる多様性の存在は、閉塞した自己満足的なディベートを打破しうる。ディベート教育にとっては間違いなく健全性をもたらす。 日本ではまだまだ、そうしたディベート間競争の自発的な試みのスピードは遅い。異種のディベートが共存し、その間の交流を深めることは、決してディベーター人口の奪いあい(ゼロサム)をもたらすだけではない。質的には、必ず相乗効果も生み出す。様々なディベートを紹介し、新たなディベート組織の誕生を手助けする孵卵器としての使命は、今後のJDAにますます求められよう。 (やの よしろう JDA 会長・中央大学准教授) |
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| 目次 | ||
●特集● ・2009年日米交歓ディベート全米代表 日本ツアー報告 2 ・寄稿: 2009年日米交歓ディベート全米代表、日本ツアー参加者から 3 ●JDAからのお知らせ● 8 ・第12回JDA秋期ディベート大会のお知らせ ・第7回JDA九州ディベート大会出場者募集 |
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| 編集後記 | ||
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